2020年12月29日

【12/27】LOVERS RAIN考察2020その2【30周年】

初っ端から謝罪です。ラバレの発売日を12/30と勘違いしてました27日でした。もう過ぎてました30周年。そんなド年末に発売してた訳がないのにorz
誰にでも思い違いはあるということで嗤って許していただきたい(何)。

さて本題。
前の記事でラバレはファンとスタッフの「お祭り」としましたが、このお祭りに乗れなかった唯一のメインスタッフが園田氏だったと断言します。そもそも、ラバレのスタッフに園田氏の名があったことは、当時から園田氏がりょあに否定派だったことを察していたわたしにとって、非常に違和感のあることでした。ですが当時は「お祭り」の勢いもあり、園田氏がやっとりょあにに向かい合う気になったんならそれで良し! で流してました。

が、年月も経ち再燃を経て更に冷静になって見直すと、村山&菊池両氏と同様、根岸監督に一矢報いるために参加しただけで、りょあにに対する愛着どころか、そもそもボーグマンに対するモチベ自体が低下してたんじゃないかと思えます。クロノスやボーグマンTVシリーズ当時の、あの御仁の雑誌媒体の露出ぶりを思うと、モチベがあったらアニメVの連載記事にちょっとでも参加していたはず。V-バージョンとFC会報のインタビューには参加されてましたが、内容にあまり触れようとしてない辺りでお察し。
それまで頑なに否定していた「リョウとアニスの恋愛関係」、夏目想太郎ほどに愛着を持てなかった「響リョウ」と否応なく向き合った結果、リョウとアニスそれぞれのキャラメイクに於いて、ラストバトルと似て異なる違和感をファンに与えることになったと思います。

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園田氏のインタビュー再掲。園田氏の中にはインタビューにある「ヒロインに愛されるヒーロー」というテンプレートが既にあり、その上にリョウとアニスを乗せただけで、ロムとレイナに互換可能なぐらいにキャラは掘り下げられてません。下手したら思春期迎えた仁とマリアにも互換利くんじゃないかしら。
園田氏のこだわりが見えるのは、序盤の公園のベンチで会話するリョウ&チャックと、ラストのカップル2組&サンダーのメタネタ絡めた会話のみで、主題であるリョウとアニスの関係性は、村山監督のオーダーに応えて書き出しただけ。と勘繰るレベルで愛情が感じられません。下手したら「悩めるリョウに拒絶されても尚尽くそうとするアニス」の構図を先に考えたのは園田氏で、村山監督は制作の都合上、それに従うしかなかったんじゃないかとすら思ったりします。脚本が二転三転したというラストバトルと逆で、プロットをひとつしか出さずそのまま脚本作業に入ったんじゃないかと。

「メモリーを喪った悲しみを引きずるリョウ」「立ち止まったリョウを励ますアニス」「そこに付け込む妖魔の残党」等、パーツ自体は別にアリなんですよ。そのパーツをパチ組みしただけで、塗装どころかパテ埋めもヤスリがけもされず段差が丸見えのプラモデルのような安っぽさ。素人の手慰みならともかく、元シリーズ構成者が「商品」を手掛けてコレというのが今更ながら泣けてきます。まあ話として成立すらしてなかったライトニングトラップの100倍はマシですけど。

TVシリーズの園田脚本回、アニス主役のSSやドラマCDを思い出してみていただきたい。リョウに理不尽になじられたら、ブチギレて部屋が半壊するレベルで殴り返すのが「園田アニス」なはずで、悲しげに黙り込むなんてあり得ないでしょう。
もしかしたら、ラバレのアニスはあくまで「ラバレ専用のアニス」であり、自分が思い入れて描いてきたアニスではない。と一線を引く意図が園田氏にあったのではないか。実際その後リリースされたカセットブックでは、アニスがリョウのことなんか好きな訳ないでしょ? と云わんばかりの(ふたりのやりとりの)刺々しさ、頑なな否定しかなかった辺りに、それが感じられます。
剣狼1で、レイナは「レイナ・ストール」を演じる女優とされていたので(何でか2と3でその設定はきれいさっぱり忘れられましたが)、園田氏の脳内では、ラバレのアニスのリョウへの恋は「演技」という設定だったんじゃないかと思います。ラストシーンが終わった瞬間に、リョウをボッコボコにするアニスというエンドロールもあり得たかも知れないですね(棒)。
小説版の発売をぺろっと告知してましたが、結局出なかったのはどういう事情なんでしょうね。そこまで進んでたならモノは書き上がっていたと思うんですが。勝手な想像ですが、菊池氏のスケジュール絡みじゃないかなあ…当時の富士見書房のビジュアル最優先主義を思うと(富士見には仕事で関わったこともあるので)、菊池氏が描かなきゃ売れないから出しません(完)ぐらい余裕であり得ますし。

話を戻して。ラバレがファンに与えたいちばんの違和感は「悩めるリョウ」じゃないでしょうか。確かに立ち位置は(ハッサンの傀儡だった)ラストバトルとは比べ物にならないぐらいに「ボーグマンの主人公」として描かれていますし、菊池氏はアニス以上にリョウのヒーロー性に拘ったのではと思う位に、彼を丁寧に演出されてました。
ですが、リョウはTVシリーズでは一貫して「誰に対しても優しく人を傷つけることを嫌う」青年として描かれており、ぬこ妖魔の罠で「メモリーを救えなかった悔恨」に追い詰められていたとしても、チャックとアニスの気遣いを邪険にしたり、2人を遠ざけたりするリョウの姿にはやっぱり疑問が残ります。
最初の考察でも触れましたが、ラバレのリョウは教師でもなくヒーローでもない「ただの響リョウ」であり、そうしないとアニスとの恋を始められない。それは理解できるんですが、ラバレは最初から最後までリョウ本来の好青年な面がほとんど描かれないままで、この点に関してはラストバトルのリョウの方がまだ(ファンのイメージ的に)しっくりいくんじゃないでしょうか。

また詳しく触れたい部分ですが、「超者ライディーン」の主人公が終盤、ラバレのリョウと同じように苦悩し廃人化する下りがあり、園田氏の作劇上のこだわりというか、手癖みたいなモンだったんじゃないかと思えます。そういえば無印ポケモンでサトシがライバルのヒロシ君に敗北した後、荒れまくって気遣うカスミにも当たり散らしてオーキド博士やお母さんに窘められても頑なな態度を崩さなかった場面があったっけ…「主人公の苦悩」のバリエーションなさすぎじゃないですかね。

個人的にですが、右手に異常を感じたリョウが、それを悟られたくない一心でアニスとチャックに心にもないことを云ってしまう、それを不本意とする描写があれば印象が変わったんじゃないかしら。そういった配慮もなく(園田氏が重視したのは「アニスのリョウに対する献身」だったようですし)、演出と松本氏の演技によるフォローで、かろうじて響リョウが成り立った作品だと思います。特に松本さん、ラストバトルとラバレ、どちらもTVシリーズから微妙にブレた響リョウだったのに、声の力でファンを「説得」したのは本当に凄いと思います。

しかし何が哀しいって、ラバレは剣狼シリーズと違い、園田氏の存在はさほど重要ではなく、誰が脚本を担当しようがファンの評価は変わらなかったと断言できる点です。ラバレは「菊池通隆作監のボーグマン」であることがすべてで、リョウとアニスがどういう結ばれ方をしようが、菊池氏が関わっていれば誰もが受け入れる。それぐらい当時の菊池氏の人気と寄せられた期待は絶大なものだった。「アニスの生みの親」「ボーグマンの原作者」という自負があったはずの園田氏が、菊池氏を乗せた神輿を持ち上げる「裏方」に回された訳で、剣狼伝説等でのジャイアンぶりを思うとモチベーションがあったとは思えないンですよ。
「ライトニングトラップ」でアニスを使えなかったことも、園田氏のモチベ低下に影響しているのではと思ってますが、長くなるので別の機会に。ただ「レイナVSアニス」が園田氏主導で実現していたら、その後のボーグマンの在り方やリョウとアニスの関係は大きく変わっていたんじゃないかと思います。「アニスとレイナは園田プロダクションの女優」という後付け設定を全面に出していたら、ラバレでリョウとアニスがくっつこうがラストバトルで同棲していようが、「あれは演技です」で否定できますし。おすし。

特に云いたかったことを優先してしまいましたスミマセン。次回はラバレ良かった探しを優先します。ラストバトルよりはいっぱい褒めますヽ(´ー`)ノ
posted by はらよしかず at 20:43| ボーグマン

2020年12月22日

【今年で】LOVERS RAIN考察2020【30周年】

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予告通りラバレ30周年記念再考察です。と云いながら実は1年前に手を付けて放置していたテキストの続きの作業でした(白目)。本当は去年のイベントに便乗して発表したかった。
ブログはじめた当初にド長文の考察やりましたが、いろいろ再検証進めたことで認識が諸処変わりました。ぶっちゃけ、好意的に見過ぎていたかなーと思う要素が少なくありませんが、撤回するほどでもないというか(どないや)。
今回は2〜3回ぐらいに分けて、間を置かずに更新できたらなーと思ってますが思ってるだけです。

ラストバトルを見返す度に痛感させられたのは、ラバレが如何にラストバトルで根岸監督に「篩にかけられて落とされた」ファンの受け皿として機能していたか、菊池氏をはじめとする一部スタッフがラストバトルに不満を抱いたか、という点です。
ラストバトルから間を置かないタイミングでドラマCDが出たので、そっちを受け皿にしたファンも多いかと思いますが、わたしは(TVシリーズ終盤以降メインから外れたことで)一旦大人しくなった園田氏を調子づかせたギルティアイテムとして認識しております。菊池氏のカット目当てで再入手してますが、いまだに聴く気が起きないのもそのせいです。

下衆な見方をすると、ラバレのメインテーマである「リョウとアニスの恋愛関係の補完」は方便で、根岸監督に目にもの見せてやりたい、という「反根岸派」によるリベンジの産物がラバレで、その「逆襲」は間違いなく成功したと思います。おそらくその時には根岸監督の中でボーグマンは過去の経歴化していて、ラバレに関心はなかったと思いますが。もしかしたら、LD-BOXのライナーノーツにピックアップされなかったのは、根岸監督に当時を振り返る余裕がなく取材を断った可能性もあったりしたのかしらと。

で、本題ですが、ラバレの価値は内容を含め、アニメVと連動した「菊池通隆作監のボーグマン」のプロモーションで盛り上がったファンが、アニメVを通して発売に至るまで、スタッフと共にボーグマンを共有できた「お祭り」期間にあったんじゃないでしょうか。あの頃のアニメVは楽しかったよね…あ、余計なことは思い出さなくていいですよさないか押入れからアニメVを取り出そうとするのは!(荒ぶる語気)

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アニメV1990年9月号より。ここからリリースまで連載記事が組まれます。菊池氏とは専門学校時代からのお付き合いだったという村山監督との親密度の高さが窺えますが、これぐらい信頼関係を築けるスタッフで固めないと作品作れなかったんだろうなあと。菊池氏ががっつり作監やったOAVって結局ラバレとゼオライマーだけですよね。

何度か書いてることですが、ラバレ発売までの菊池氏の仕事量が本当に半端なく、ボーグマンを手掛けたい、ファンが求めるものを提供したい、という情熱には今でも心打たれるものを感じております。続編への抵抗感を抱えたままラストバトルを発表した根岸監督と対照的だったと云わざるを得ない。

なんせ、

・作画監督&Bパート絵コンテ
・セール版ビデオ&LDジャケット(+特典ポスター)描き下ろし
・レンタル版ジャケット描き下ろし
・サントラジャケット描き下ろし&楽曲解説文寄稿
・アニメV連載記事参加&表紙イラスト2回
・劇場版パンフレットコメント寄稿
・上映イベント登壇
・FC会報インタビュー


これらの仕事のほとんどをやり遂げられてるんですよ(さすがに本編の作監はお手伝いが入ったそうですが)。麻宮名義の仕事も抱えていたことを思うと、よく過労で再入院されなかったなあと驚嘆します。作監の現場もPとの攻防があった等ギリギリの状況だったそうですし、本当に執念の制作だったんだなと。
ラバレが当時のOAVでも稀有と云ってもいい点は、「菊池通隆作監のボーグマン」の一点突破で、ラストバトル超えどころか90年の東宝アニメビデオで売り上げ1位という結果を残したことじゃないでしょうか。おそらく菊池氏は「ボーグマンはオレが参加しなきゃファンは喜ばないだろ!」と素で思ってたと思いますし、自分を外して一方的に完結したラストバトルに憤り、ラバレという「反論」を(リリース的に)成功に導いた。そのプライドと当時の人気、実力が「本物」であることを自ら証明した訳で、そこは再評価されていいと思います。こんなナチュラルボーン俺様企画でヒットさせるなんて、今でもなかなかできることじゃないと思うんですよ。

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サウンドトラックのライナーノーツ。別のページで各曲ごとにコメントを付けていられます。それもサントラの付加価値になってるのが凄いところ。そして行間から垣間見える根岸体制への不満。TVシリーズもラストバトルも菊池氏的には相当に歯がゆい内容だったんでしょうね。

「超音戦士」の在り方をスルーして終わらせたラストバトルは菊池氏にとって納得のいく作品であるはずがなく、それはラストバトルで演出を担当した村山氏も同じ思いだった。ラストバトルの考察で飽きる程触れましたが、リョウとアニスが同棲に至るまでの「空白の期間」など三年後の登場人物たちを描く上で必要だったはずの設定を、根岸監督も岸間氏も他スタッフにきちんと説明してなかった(考えてなかった?)と思われます。アフリカ設定前提の岸間氏のSSでは、ラストバトルにはつながらないですしねえ。
アニメVの連載記事で、村山氏はラストバトル批判と取れるコメントを残しているので、スタッフ間でもわだかまりの残る現場だったのかも知れません。

内容は決して褒められたものではなかったものの(こら)、ラバレはスタッフとファンが一緒に打ち上げた最後の花火だと思えば、終始ファンに向き合うことなく幕を引いたラストバトルより、良心的な作品だったと思います。

ここまで褒めてますが、ラバレにも致命的な欠点が存在してます。はっきり云いますが「脚本」です。最初の考察で褒めちぎっていたわたしに云いたい。「もうちょっと冷静になって見たら園田氏はやっぱり園田氏だぞ」。(次回に続く)
posted by はらよしかず at 17:54| ボーグマン