2015年08月18日

【妄想以上SS以下】SIDE STORY2【リョウ&アニス】

いまヤフオクに出ているボーグマンのガレキ6個セットすごいですねー。アニスは割と何でも見かけますが、リョウとダストジードなんて貴重じゃないのか。アニスのガレキは入札率高いですが、制作目的なのかコレクションなのか、さて?
アニメ本編・菊池さんのビジュアル・ガレキと、それぞれ違うジャンルの層にアニスは認知されていったはずで、あの時代にメディアミックスで成功したキャラなのかも知れないですね。エロ同人でしか知らないというおっきなおともだちも多そうですがヽ(´ー`)ノ

では本題。
チャックとアニスのお話に続いて、2度目の駄文公開です。拍手とか見ると割と評判良かったっぽいので調子に乗りました。だが反省はしていない。
ここしばらくの忙中にできた時間で書きました。おかげで絵を全然描けてない罠。次はアニスと美姫と云ってましたが、かなり前に妄想したリョウとアニスのプロットを思い出したので。
リョウの危うい生き様に触れたアニスの複雑な心情がメイン。掛け算要素は後半に出てきます。甘いっちゃ甘い。オリキャラっぽいひとたちが出てきますがモブレベルです。
前回も申しましたが、脳内プロットをそれっぽく文章化しただけで、SSというにはいろいろ足りてないのでそのへんご了承ください。創作で文章書くのって、ガチで取り組んだら絶対袋小路に入りそうでなあ…。

補足というか、おまけ的なものも描きたかったのですが時間が押してるので後日に。
今週に忙しさのピークがくるので、次の更新どうなるかなあ。いつも通り今週中にもう1回できたらほめてくだち!(何だと)

では続きを読むからどうぞ。


 アニスが学園最上階の窓から、見慣れた黒いジャケットを視界の端に留めたのは偶然だった。
 普段なら彼はこの時間、屋上で子供たちと戯れつつ昼食を採っているか、職員室でチャックと他愛ない雑談を交わしているはずだった。
 それが、今日は中庭の大きな木の下で、こちらに背を向けて誰かと話をしている。
それだけなら、特に珍しい光景ではなかったと思う。だけど。
 彼の背中の向こうに見たことのない少女がいて。
その思い詰めたような表情を視認した瞬間、アニスは心にさざなみが起こるのを感じた。
 自分と同じぐらいの年恰好の少女。
清楚な雰囲気を放つ黒く長い髪。ほっそりした肢体。美人と云って差し支えのない大人びた容姿。
 何もかも自分とはタイプの違う、おそらくは彼好みのルックス。そんなことまで瞬時に解析できた。

───だめ。

 人並み外れた聴覚を作動させる、体内の“スイッチ”を入れそうになる衝動。それに駆られた自分にアニスは困惑した。
 その時。
 少女は何かを口にし、そして彼にお辞儀をしてくるりと背を向け、小走りに中庭を去って行った。
彼女の目はとても哀しげで、泣きそうだった気が、する。
 少女の背中を見送った彼が溜息と共に振り返り───こちらと目が、合った。
「あ」
 思わぬタイミングで思わぬ人間に出くわしたとばかりに、リョウは目を丸くして口を空けた。


「ごめんなさい…見るつもりなんて、なかったのよ」
 格納庫でサンダーの整備をしているリョウの背中に、アニスは気まずそうに謝罪の言葉をかけた。
「謝らなくていいさ。別に隠すことでもなかったしな」
 アニスの方を振り返ることなく、リョウは言葉を返す。その口調はいつもの彼のそれで、特に含むものは感じられなかった。
「…知り合い?」
 んー、とリョウは言葉を濁した後で、
「ちょっと前にさ、パトロールしている時に、妖魔に襲われているところを助けたんだ。そしたら、どうやって調べたんだか、俺がここの教師って知って、お礼を云いにって」
「そうなの? …てっきり、告白でもされたのかなって」
それは、何故か湧き上がった安堵から出た軽口、の筈だった。
「ああ」
 あっさりとした肯定に、アニスの頭の中は一瞬真っ白になり、知らず腕に力がこもった。
「一目惚れなんて云われたの初めてでびっくりし、…アニス」
 少し後ろを振り返り、彼女をちらっと見たリョウが咎める。
「曲がってるぞ」
「え、……あ!」
 アニスは我に返り、自分が出席簿を抱えていたことを思い出した。本当に腕の中でくの字になっている。
慌ててそれを両手で元に戻すアニスをどう思ったのか、リョウはサンダーから何かの部品を取り外しつつ、話を元に戻した。
「ま、断ったけどな」
 アニスの脳裏に、少女の哀しげな表情がよみがえる。
「…どうして? ああいう娘、好みのタイプでしょ?」
「え、なんで分かったんだ?」
 自分の分析が当たったことによる微かな胸の痛み以上に、アニスはリョウが拒絶した理由を知りたかった。
「…勘よ。だったら、なぜ…」
「俺は、普通の人間じゃないから」
 いつもの軽い口調から出たその言葉に、アニスは絶句した。
「最初の手術だけなら、普通よりちょっと頑丈なだけで済んだけどな…でも俺とチャックは戦闘仕様の手術を受け直した時、メモリーに無理云ってかなり体の中をいじっちまったんだ。だから、もう普通に生きられない」
 サンダーから外した部品を掌の上で転がしながら、リョウは淡々と続ける。
「機械に置き換えた部分が増えた所為で、歳の取り方が生身の人間と大きくズレる。20年の差は出る覚悟をしろって、メモリーにさんざん念を押されたよ。…相手は歳を取っていくのに、俺は変わらないんだぜ? 嫌でも悲しませることになっちまう」
「でも、チャックは…」
 リョウの云いたいことは理解できる。自分も同じサイボーグだから。だけど。
 それなら、ファントムSWATの隊長と自然に魅かれ合い、心を寄せ合っていることを隠さない、もうひとりの仲間はどうなるのか。
「美姫は特別だろ。桂財閥のお嬢様のクセに、真っ向から妖魔にケンカ売るタフな女だ。大丈夫さ。…運が良かったんだよ、あいつは。でも、俺にあいつほどの運はない」
「リョウ…」
 孤独に生きる決意を屈託なく云ってのけるリョウを、アニスは無性に切なく思った。彼は妖魔を倒す力と引き換えに、“普通”を諦めて後悔していない。だけど、そんな強さは哀しいのではないか。
 リョウは布で磨いた部品を、再びサンダーに嵌め込んだ。
「仕方ないさ。親からもらった体を勝手にいじりまくった代償ってことで、……あ」
すまなさそうな表情を浮かべ、リョウは立ち上がりアニスの肩をぽんと叩いた。
「悪い。今のは俺の話だからな。アニスには全部受け入れてくれる優しーい男が、必ず現れるさ」
 無神経なことを云った。そんな後悔とフォローに対し、アニスは俯いて、口の中でこう呟くしかなかった。


「…バカ」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「今日はボンゴレでいい?」
 そう云って、食材を冷蔵庫にしまい終えて近寄ってきたアニスの手を、座椅子に腰掛けていたリョウの手が捉えた。
「…こっち来いよ」
「だめよ、これから支度するんだから」
「まだ、腹減ってないからいい。…それより」
 リョウはアニスの手を強引に引っ張り、勢いで倒れ込んだ彼女を器用に抱き留める。緩く組まれた足の中に、アニスのお尻が収まる形になった。
「ちょっ…! ……もう」
 いわゆる“姫抱き”の要領で抱き寄せられたアニスが、苦笑交じりにリョウの首に腕を回す。そして、軽くキスを交わした。
 妖魔との最終決戦。メモリーの死。妖魔の残党の粉砕。それらを乗り越え、アニスは仲間としてではなく、恋人としてリョウの傍に居るようになった。
 長く降った雨が上がったあの日から、二人は互いの住居を行き来するようになり、今日はアニスがリョウのアパートに来ていた。
「…ん」
 リョウの鎖骨に頬を寄せる。額に感じる彼の吐息と、脇に添えられた手の温もりが心地いい。こんな風に、リョウが女の子として自分を大事に扱ってくれるようになったことが嬉しかった。ほとんど毎晩のように求められ、肌を重ね合うのはまだ恥ずかしいけれど。
 しかし。
今日のリョウは様子がおかしい。
 サイソニック学園の教師たちは現在、仮校舎で授業を再開する準備に追われていた。リョウはメガロシティの混乱の所為で、連絡が取りにくくなっている生徒をリストアップし、直接会いに行って授業への参加を呼び掛ける役目なのだが───戻ってきてから、微妙に不機嫌な顔をしている。
 本人はいつも通りのつもりでいるようなのだが、僅かに刻まれている眉間のしわをアニスは見逃してなかった。今の強引な行動といい、どうしたのだろうか。
「ねえ、リョ…」
「何なんだよ、あいつ!」
 出し抜けにリョウが大声を上げ、アニスの問いかけに被さった。
「…あいつ?」
「だから、あいつだよ、あいつ!」
 あまりにも突然で、意味が分からず目を丸くしたアニスと、リョウの視線が合う。リョウは顔を赤らめ、ゲームで劣勢に陥った子供のような、悔しそうな表情をしていた。
「美姫の知り合いとかいう、あの優男だよ!」


 リョウが外回りをしていたその時。
アニスは美姫の計らいで桂財閥傘下の教材メーカーの社長とミーティングを行い、サイソニック学園再建の支援の申し出を正式に受け、工事中の学園を案内した。
 社長はチャックをうんと大人にしたような長身の美青年で、終始柔らかな物腰でアニスに接してくれた。
 用事ができたのか、挨拶もそこそこに去ってしまったが…。

「あの野郎、『アニスさんに恋人はいるんですか?』って俺に訊いてきやがったんだぜ! 俺に! 俺は敵にならねえってことかよ! なめやがって! 金で妖魔が倒せるかってんだ!」
 うがーとまくしたてるリョウを前に、アニスはやっと事情を把握した。
 思い返すと、あれは食事の誘いだったのではと思うようなことを云われた気がする。しかしアニスにとってはその程度だし、相手も社交辞令のつもりだったのろう。…と思う。
 そそくさと帰ってしまったのはリョウが原因で、リョウの不機嫌の理由もそれだったのか。
「…何もされてないよな?」
 ひとしきり騒いた後、低い声でそう尋ねたリョウを、アニスは半目で睨んだ。
「ふーん…疑ってるんだ」
「え”」
 返答に詰まったリョウが固まる。
「…もう」
 再びリョウの首に手を回して抱きつき直す。
 リョウの恋人になっていちばん驚いたのは、彼のこういうところだった。
アニスが男性と話をしているところを見ただけで面白くなさそうな顔をする。チャックでも渋面になる時があるのだから、呆れるしかない。それを面白がるようになったチャックにおもちゃにされていることを、リョウは自覚しているのだろうか。
 だけど。
 妖魔を倒すサイボーグとなった代償として自分の未来を切り捨て、求めることを諦めていたリョウが見せるようになった、子供っぽい独占欲を自分が独り占めしている。
それが最高に嬉しいのだと、アニスは今気がついた。
「…私だって、普通じゃないもの」
 リョウの首を抱く腕に力を込める。
「…アニス?」
「だから、普通の男の人じゃだめ。私はヒーローがいいの。それも、メガロシティを救えるぐらいの強ーいヒーローでなきゃ、嫌なの」
 首筋に顔を寄せていたせいで顔は見えなかったが、リョウの鼓動が跳ねるのを感じた。
 数秒の沈黙の後、アニスの腰を、脇を抱えていた手が別の意図の下で動き出した。
「え? …ひぁっ!」
身動きを封じるように腰を抱く手に一層力を込め、もう一方の手は服越しに、押し上げるように胸を掴む。
 アニスは咄嗟に、更に胸をまさぐろうとする手を押さえた。
「ちょ、だめ、よっ…」
「無理」
 短く云い捨ててリョウはアニスの手を握り返し、彼女の首筋に唇を押し付け、強く吸う。そこを起点に甘い痺れが背筋から腰へと通り抜け、アニスはぴくん、と背中をしならせた。
「ぁ、んっ……、ほんと、だめっ…、ごはん…どう、す…」
「っ…だから、腹減ってないって…こっちの方、が…」
 先刻からお尻に当たっているそれの切実さと、受け入れることに慣れた躰の奥に熱が生じたのを自覚して、アニスは抵抗を諦めてリョウに囁いた。
「………ベッド、連れてって…」
 すぐ傍にある、愛し合う為に使われるようになったそこを横目で見て───ふわりと、リョウに抱き上げられる感覚に身を委ねた。
タグ:小話
posted by はらよしかず at 16:44| ボーグマン