2018年05月27日

【ジリオン×ボーグマン】異星に舞い降りたエトランゼ/前書き&プロローグ【妄想以上SS未満】

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久しぶりのSSモドキです。
上記タイトルでお分かりいただけると思いますが、内容はジリオンとボーグマンのクロスオーバーです。これを書いている現在でも執筆は終わっていませんが終盤に突入しており。完結のめどが立ったので発表に踏み切りました。わたくしはとても楽しくそして真面目に書いておりますが、読んで下さる方にとってはどうなのかはまったく分かりません。痛いと思ったら即ブラウザを閉じて忘れて下さい。いや本当に。
結構長い上に以降も加筆修正作業が続くので、不定期連載となります。

そんな訳で以下は注意書き。必ずお読みください。

・作品は(マンガで浮かんだ)脳内ネームをできるだけ読みやすく文章に起こしたもので、真っ当な二次創作小説ではありません。創作系の文章の才はないことは自覚しており非常に稚拙かと思います。見逃して下さい。
チャンプとチャックの見分けを付けられる程度の予備知識は必要となります。見逃して下さい。
・各作品に関する世界観や設定は、知らなくても読めるように最低限の説明を織り込んでありますが、それでも不明な点が出てきたらwikiをどうぞ。
・この作品仕様に細かい設定を一部改変しております。妖魔関連は(作品自体情報が少ないので)特にでっち上げてます。見逃して下さい。
・SF考証に対するツッコミはすべてザ・松田のこの画像で返答させていただきます。見逃して下さい。
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考えるな! かんじるんだ! の精神で、軽い気持ちでお読みくださると幸いです。見逃して下さい。
・あと、話の展開の都合上、(フォローは予定しておりますが)ガチなJJ×アップル派の方にはもしかしたら合わない内容かも知れません。見逃しt(略)

では序章をどうぞ。



*************************************








 彼は目の前にいる女の子を、真剣な目で見つめる。

 どくんどくん。

 胸の高鳴りは増す一方で、聞かれているのかも知れない。


 彼女は人間離れした聴覚を持っているのだから。


 だが、もう決めた。
 チャンプの云ったことなんか知るもんか。
 きっと、あの出会いは運命だったんだ。
 彼女は、オレと出会うためにこの世界に来たんだ。
 
 この先、どんな障害が待っていたとしても。

 君はオレが守る。
 
 だから、ずっと。
 
 ずっと、オレと一緒に。

 彼は彼女の両手を自分の両手で包み込むように握る。初めて見る彼の思いつめた表情に、彼女は少し戸惑った。


「……JJ?」







【メガロシティ/メガロビル周辺】

“それ”は突然現れ、そしてヒトの耳に障る金切り声で咆哮した。



《《《ガ、ア、アアァアアーーーーー!!!!!》》》



“それ”は子供の手で無造作に角や牙を付けられた玩具の恐竜のような、歪な造形をしていた。
 だが、“それ”の大きさは玩具では済まない。“それ”のスケールは博物館で展示されているティラノザウルスの等身大模型ぐらいはあった。
そして、“それ”はメガロシティの中枢・メガロビル敷地内の公園で暴れ始め、昼下がりのひとときを楽しんでいた周りの人々は、叫びと共に避難をはじめていた。

 しかし、その非日常的な「災難」は、異世界からの侵略者「妖魔」に魅入られたかつての東京「メガロシティ」の住民たちにとって、珍しいことではなかった。
 妖魔が不定期に放つ“異形”に街が脅かされる。すると、それを撃退する戦闘チームが現れるのだ。


 ひとつは世界警察によって編成された特殊部隊「ファントムスワット」。
 そしてもうひとつは―――


 メガロビルに近寄るでもなく、手当たり次第に樹木を倒し、引き抜き、無造作に放り投げるだけの“それ”に、両サイドに羽根のようなカタパルトを実装した巨大なバイクが接近。搭乗していた青と緑の人型のシルエットが軽やかに跳躍し、“それ”の前に飛び降りた。

「やはりお前たちが先だったか…ボーグマン」

 そう呟いた“彼”が最も疎んじる障害。
 天才女性科学者・メモリー・ジーンが独自に開発したプロテクトスーツ「バルテクター」を身に纏い、肉体を機械で強化し、人の身では扱うことは不可能な特殊ウェポンで妖魔に立ち向かう3人のサイボーグ。子供たちを守る最後の砦「サイソニック学園」の教師。

 それが彼ら、「ボーグマン」であった。


「妖魔獣か。暴れてるだけか? 何が目的だ?」
 深緑のバルテクターを揺らし、チャックがソニックバズーカを構え、妖魔獣と距離を詰める。
「理由なんかどうでもいいだろう。さっさとぶっ飛ばして授業に戻ろうぜ」
 下手に悪知恵の利く妖魔よりはマシだ。力で勝てる。マリンブルーのバルテクター越しに収集したデータで、リョウはそう判断した。彼は早速バルテクターの“核”に意識を集中し、エネルギーを溜め始める。チャックはその間の援護に回ろうとした。

「リョウ! チャック!」

 その声に2人が振り向いた先には、遅れて駆け付けたボーグマンチームの紅一点・アニスの姿があった。
「遅刻だぜ、アニス先生?」
「そう云うなリョウ。女の子はお出かけの準備に時間がかかる生き物からな」
「そういうこと。さあ、早く片付けちゃいましょ」
 ふたりと軽口を交わし合うアニス。まだバルテクターは身に付けてない。授業が大詰めだったために生徒を捲くのに苦慮した彼女は、正体を知られる可能性を避けるため、現場での「変身」を選んだのだ。

 その判断が、後で大きな後悔を生むことになるが―――

 バルテクターを装着するべく、左手に巻かれたソニックレシーバーを胸の前で構えたアニスは、ある「物体」が自身の頭上に落とされたことに気付かなかった。

「ボーグ・ゲット・オン!」

 アニスのヴォイス・キーにソニックレシーバーが反応し、バルテクターが転送され、一瞬で変身を終える―――
 
 はずだった。

 その瞬間。

 アニスの頭上に迫っていた落下物が転送の余波で起こる衝撃で爆ぜ、小さな黒い靄となった。
 靄はもごもご、と蠢いた後、ぶわっ、と急速に膨れ上がる。真っ黒な雲のような形状に変化したそれは、あっという間にアニスの全身を覆った。
「アニス!?」
 リョウが咄嗟に駆け寄り、雲の中に手を突っ込む。だが、その雲が放つ青白いエネルギー波がばちん、とリョウの手を弾いた。
「!? こ、のっ…、アニス!」
 もう一度手を伸ばし、青白い光が与える痛みを堪え、自分に差し出されていたアニスの手を掴もうとした。だが。
 指と指が触れ合う寸前で、アニスの体はごぷり、と、背後に広がっていた深い闇へと沈んだ。
「リョウ!」
 縋るような表情を置いて―――アニスは黒い雲に飲み込まれ、それと同時に雲も急速に縮み、消え去った。
 あまりにも予想外のアクシデントを前に、リョウは手を出したまま硬直する。だが、妖魔獣の暴走は止まった訳ではなかった。
「おいリョウ!」
 リョウとアニスから少し離れた位置にいたため、リョウ以上に事態が飲み込めないチャックも狼狽した。だが、今は。
「俺がこいつを押さえる! その間にメモリーに連絡しろ! 早く!」
 だが。
 チャックの叫びは耳に届いておらず、リョウは茫然と立ち尽くすだけだった―――。

***

「…ふん」
 眼下で起きた一連の出来事を見届けた“彼”―――ダストジードは小さく鼻を鳴らした。
 メガロビルの象徴として、街を見守るように厳然と佇む巨大な女神像。その頭上にダストジードは立ち、濃い緑色をした長髪を風に靡かせていた。

 ただの供養のつもりだった。
 先日“赤い星”を落とすために命を賭し、そして去った妖魔三神官のひとり・ケルベルス。
 妖魔を開発する能力はウォンゴッドやフェルミナに劣ったものの、主であるメッシュへの忠誠心はダストジードも一目置いていた。
 その死の後、彼が遺した「研究結果」を手に取った際、失敗作として打ち捨てられていた妖魔蟲がダストジードの関心を引いた。
 蛾の幼体にしか見えないそれの体液に、メモリー・ジーンの開発した転送システムに干渉する物質が含まれている可能性を見出したからだ。

 だから試した。
 彼の手持ちの下級の妖魔を放って。
 首尾よく、この場で転送を行った女のボーグマンが引っかかった。
 そしてその効果は、彼の予想を上回った。


 だが。
 失敗作であるが故に、生成過程の記録は残っていない。
 失敗作であるが故に、ダストジードもそれ以上の興味を抱いてなかった。


「…ボーグマンを一体、時空の彼方に葬れたのだから本望だろう」
  踵を返し、風で黒く波打つマントを翻す。

「この結果、メッシュ様にしかと伝えておこう。ケルベルス」
 そう弔いの言葉を残し、ダストジードは自らが割いた空間の向こうへと去った。



【惑星マリス/海上】

「あーーーーー!!!!! つーーーーまんねーーーええーーえーーー!!!!!!」
 抜けるような青空をそのまま映したかのような一面の海原。
 そこにぽつんと、ひとつの影を落として移動する白い輸送機・ビッグポーターのコックピットにJJの絶叫がこだました。
「…お前の顔か? うん、確かにつまらんな」
 チャンプは真面目な表情で、非情なおかつふざけた言葉を投げ返す。魂の叫びを言葉のナイフで返されたJJは鼻の穴を膨らませ、不満をたたえた表情で座席から立ち上がり、ずかずかとチャンプに近寄った。
「この凛々しい顔のどこがつまんねーってんだよ!」
 黒い短髪。丸く大きな瞳の上に、太い眉が乗った東洋系の童顔。やんちゃ坊主をそのまま青年にしたようなJJの顔を、チャンプはわざとらしいほどにしげしげと見つめた後、ふん、と鼻で嗤った。
「ぜ・ん・ぶ」
 むぎぃ! と怒りで顔を赤く染めたJJに、チャンプはさらに追い打ちをかける。
「オレの顔をよーく見てみろ。ほれ、このキューティクルいっぱいのツヤツヤなブロンド、色白たまご肌、クールなアイスブルーの瞳…この完璧なフェイスを前にしても、まだ凛々しいなんて単語を使えるのか? あ、意味分からずに使ったのか! そいつぁ悪うございましたねええ!」
「チャンプてめえぇぇーーーーー!!!!!」
 チャンプの口から連射された侮辱のマシンガンに、JJはヘッドロックという反撃に出た。
「そろそろ黙らないと、ふたりとも海に放り出すわよ」
 地の底から響くような低い声で、ぼそりとアップルがつぶやく。ジュニア・スクールの男児がマシに見える、低レベルの小競り合いに心底うんざりしていた彼女の声には、男2人が即沈黙するほどの凄みが含まれていた。
「まだ海開きには早い季節なんで」
「遠慮しまーす」
 チャンプ、JJの言葉のリレーで見事に返答が成立した。
 コンソールに目を落としたままだったアップルはふう、とため息をつき、淡いブルーのロングヘアを揺らしてJJに顔を向けた。
「…で?」
「え?」
 水面にライトグリーンのインクをひとしずく落としたような、透明感のある瞳でJJを見つめるアップル。彼女はまだ17歳。童顔だが歴戦の戦士として死線を潜り抜けてきた経験が、彼女を大人びた風貌に見せていた。
(黙ってれば可愛いんだけどな、そこそこ)
 JJは内心、ことあるごとに呟いていた。
「何がつまんないの? …また耳障りな絶叫されたら嫌だから聞いてあげるわ。カウンセリングの仕事にも興味あるしねー」
「止めとけアップル。こいつは頭の構造から直さないと駄目なんだから、本職のセンセイだってお手上げだ」
「会話が進まなくなるから止めて」
 チャンプの茶々をそう制して、アップルはJJの言葉を待つ。
「なーんか引っかかるけど、まあいいや」
 そしてJJは軽く息を吸うと、矢継ぎ早に捲し立てた。
「もう! 最近ずーっと! ノーザ倒して基地に戻ってメシ食って寝て起きたらまたノーザ倒しに行ってを繰り返してるだけだろ!? 戦場と基地を往復してるだけじゃん! こんな青春ひでーと思わない!? いや自分で選んだおシゴトだよ分かってるよ!? だけどさ、ちょっとは潤いのある生活があってもいいと思わないか? うるおいー!」
 アップルは眉間を押さえた。
「…あのねJJ、もうちょっと簡潔に云ってくれる?」
「つまり」
 チャンプがしたり顔で云い当てた。
「可愛いカノジョが欲しい」
「むちむちギャルなら云うことなし!」
 JJは愛する女優・セシルの肢体でも妄想したのか、むふむふとだらしない笑顔で体をくねらせ始める。
「お帰りなさーい任務頑張ったんだー? お疲れさまー、そう云ってうまーいメシを作ってくれるだけで毎日バラ色だぁねー! んでもってちゅー! ぱふぱふ! はー癒されてー!!」
 訊いて損した。アップルが無表情で心の底からそう思った、その時。
「…これは!」
 JJの絶叫をスルーしていた、ビッグポーターのメインパイロット・デイブが初めて口を開いた。
「前線基地R周辺で、空間の歪みが発生してる…今までになかった現象だ」
「ノーザか!?」
 デイブの緊張した声に、一瞬で3人の空気がピンと張り詰めた。
「分からない…いや、違う気がする。こんな現象を起こす技術は、ノーザにもないはずだ」
 ノーザが関係していない案件は彼らの管轄外だ。しかし。
「何か面白いものが見れるかも知れないってことか!? 行ってみようぜ!」
「そうねえ。デイブも興味が止まらないみたいだし、調べてみましょうよ」
「別に反対する理由はないな。…だが、ノーザより厄介なものと出くわすかも知れないぜ?」
「そん時はそん時でしょ! “ジリオン”に選ばれたオレたちなら何とかできるって!」
 そしてビッグポーターは前線基地Rへと進路を変えた。

 ここは惑星マリス。
この星に侵攻を続ける異星人「ノーザ」に対抗できる唯一の光線銃“ジリオン”。
その使い手を集めた特殊戦闘チーム「ホワイトナッツ」の彼らが向かった先には、思わぬ出会いが待っていた。

(続く)
タグ:小話
posted by はらよしかず at 20:00| ジリオン×ボーグマンSS