アニメディア1988年8月号より。アニメ誌では唯一、リョウ・チャック・アニスの詳細なプロフィールが掲載されている記事です。読者からのメッセージと併せた各キャラクター考察はそれなりに面白いですが、プロフィールに関しては園田氏が夏目想太郎設定の時に想定していたものと思われ、響リョウありきの本編に沿ったものかはかなり疑問です。しかしこの記事で示された「情報」が、後々まで読者どころかスタッフも混乱する要因となり、ただでさえ雑多なボーグマンの印象を、更に雑なものにしてしまったのではないでしょうか。
リョウの設定は夏目想太郎のプロフィールに、本編で重要な設定となった「宇宙飛行士」をねじ込んだだけという印象です。12歳でバイクレースで賞総ナメで、でも半年でレーサー引退とかその経歴いる? と思わざるを得ない。根岸監督や他のスタッフ的には「バイクはリョウの趣味」ぐらいの認識だったのに対して、園田氏にとってバイクレースを極めし少年で、この時点では園田氏の中では、リョウはあくまで響リョウという名前にされた夏目想太郎。その想太郎に欠かせない設定だったんでしょう。そういう設定と本編の齟齬がボーグマン3人には多く含まれており、特にアニスは園田氏の思い入れの深まりと共に、スタッフが認知していなかったと思われる「園田設定」が追加されていくことになります。根岸監督が認知していた設定って(確認できた限りでは)「マーシャルアカデミー出身のエリート」ぐらいな気が。
家族構成も、苗字は「夏目」で考えられていたものでしょうなあ。妹がいます設定はストール兄妹を引きずっていたんでしょうか。
アニスは本当に情報が雑多で、これは後から園田氏が追加していっただけでなく、取材時の思いつきで改変したものも含まれている気がします。
まず実家の設定。根岸監督は後にツイッターで、アニスのネーミング考慮時に、彼女の実家を「巨大な農場を経営(だから苗字がファーム)」としたことを明かしておられました。しかし公式化しているのは「巨大ファーストフードチェーン店を経営」。これはラストバトルで、アニスが「毎日ハンバーガーを焼いている」と語るところに名残があります。「実家がお金持ちのお嬢様」は確定していたものの、その背景設定はスタッフ間で認識の相違があったことが窺えます。
アニスの略歴学歴に関しては信憑性がかなり薄いです。というのも、園田氏がこだわった「歌手志望」が記載されておらず、後に「アニスにおまかせ!」に掲載されたプロフィールに追加。その「アニスに〜」版プロフィールとこのアニメディア版のプロフィールが全然違う内容で、園田氏の匙加減で変更されたとしか思えません。推測ですが、「アニスに〜」の時点で、園田氏はアニスをレイナに続く「園田ヒロイン」として、(リョウとの恋愛関係の否定含めて)キャラを作り直す意図があったのではないでしょうか。「アニスにおまかせ!」は、園田氏にとって都合のいい「園田アニス」プロモーション冊子という側面があったと思います。
※「アニスにおまかせ!」版プロフィール
しかし、本編終了と同時期にアニスへの執心が薄れていった感があるのは、「後日談」のラストバトル(リョウとアニスの同棲設定)が影響しているように思えます。
ホンマ妄想ですけど、根岸監督も剣狼伝説で「園田Pの女優」となったレイナありきの顛末を知っているが故に、アニスをレイナの二の舞にすることを避けたかった。だからリョウとアニスの恋愛関係を強引に成立させ、園田氏の私的な思惑が入る余地をなくしたかったんじゃないでしょうか。
設定の混乱という意味ではチャックも大概なことになったのが、このプロフィールから窺えます。本当なら夏目想太郎ありきの設定が総ボツになった時点で作り直さなくてはいけない設定を、そのまま使ってしまったことで、説得力のあるキャラ造形が困難なことになったんですよね。
初期設定のチャックなら「傭兵経験のある少年」という突飛な設定もアリな世界観だったのは認めます。ところが世界観が変わった上に「宇宙飛行士」の経歴が加わったことで、リョウより無茶苦茶なことになってるんですよ。リョウの「バイクレーサー」は半年、チャックの「傭兵経験」は1年と、ない方がキャラ的にスッキリしたであろう設定にこだわったせいで、かつての視聴者から愛のないツッコミを受ける汚点になってしまったんじゃないでしょうか。
そもそも、チャックの傭兵設定はスタッフも疑問を呈していたことはアニメVのラバレ連載記事で村山監督が明かしており、略歴&経歴に関しては眉唾もんと思っていいでしょう。チャックも妹がいる設定で、どこまでも園田氏の趣味疑惑が付きまとうところも胡散臭く思える要因です。まあ「妹萌えは世界を救う」が小説版ライトニングトラップのテーマだったぐらいだしねえ(割とマジで)。
そんなカンジな平成最後の更新でした。次は令和の世でお会いしましょうヽ(´ー`)ノ