前回紹介したアニメディア88年9月号ですが、別冊付録「ア・ブ・ナ・イアニメ マル秘極秘資料FILE」には、園田氏によるアニスの一人称ショートノベル「アニス 夏のダイアリー」が収録されております。以前から度々話題にしていたこともあり、タイミングとしても今回いい機会と思いアップさせていただいた次第。著作権的に問題あるようなら削除します。
まずはお読みください。
…読み終わりましたか?
まあアレです。なぜ女の子の一人称で書こうと思ったのか。この時期まだスレイヤーズが世に出てなくて本当に良かったですね。「オッサンの考える可愛いヒロイン妄想」で塗り固められたアニス像にクラクラさせられました。いやそれで可愛さが成立していればいいですよ? 後年にやはりアニメディア別冊付録で発表されたレイナSSのレイナだってギリアリだったし。でもアニスはただのヒステリー糞女じゃないですか。オレのアニスに何してくれてやがったのかという憤りしかない。ともすればエロ同人誌のアニスの方が可愛いかも知れないとか何事なの。
それを置いても本当に当時既に売れっ子文筆業家だったのかと疑ってしまうほど、文章力もセンスも低レベルで、とりあえず脱稿した後ちゃんと読み返して修正しました? と問いたい。小一時間問い詰めたい(古いよ)。
片っ端から細かくツッコミをさせていただきますけど、
・基地に戻って授業の準備をしたかったはずのアニスがなぜ直帰しているのん?
・アニスがボーグマンになった事情を仲間にも云わない理由「自分がボーグマンであることには変わりないからどうでもいいじゃない」…ちょっと何云ってるのか全然分からないですね。作者の都合とはっきり書いた方が良かったんじゃないですかね。本編でも「そういうエピがないだけでリョウとチャックは実は既に知ってます」という設定でも不思議じゃありませんでしたし。
・冒頭でリョウはアニスがサイボーグになった理由を云わないことに疑問を呈しますが、この後でアニスのサイボーグ化一周年を思いっきり祝ってますけど教授これは一体。
・リョウは「アニスがサイボーグになった日」だけメモリーに教えられて屈託なく祝うんですか? 理由は知ってたけどとぼけて探りを入れたのか、ただのアホウなのかどっちなんですか?
・そもそもアニスは延命の措置でサイボーグになり、決して望んでそうなった訳ではないと強調されている。「重い過去」なはずなのにそれを誕生日の感覚でサプライズパーティーを仕掛けるというシチュはキチガイ沙汰以外の何ものでもない。
・アニスは自分の身勝手で日本に残った上に、パパに高級マンションを買わせる糞娘ということですか? 家族にも事情を云ってないんですよね?
・まあ(心無い言葉を云われたからとはいえ)感情に任せてリョウを思いっきりぶん殴って吹っ飛ばしておきながら「いい気味だわ」で終わらせるメンタリティなので性根が腐ってるんでしょうね。園田氏の中ではこういうアニスを可愛いと思って書いてらっしゃったんでしょうね。
・とか云ってたら下段でアニメディア編集部の「注釈」が記載されている辺り、何も考えずに書いたことは明白。シャワーシーンありきで考えたからそんなことになったんですかね。
・そのシャワーシーンの描写は読者のボーイズアンドメンには刺激的だったかも知れませんけど、いいトシのBBA的にはオッサンの劣情丸出しで正直ひいてしまう。胸がいつから大きくなったのかとかうわあ…。
・過去回想は28話とだいたい同じで、この時点で28話に対する執念が感じ取れますけど良かったのかここで盛大にネタバレかまして。
・まあわたくしの脳内検索で、バイファムでも早い時期からロディとカチュアが接近するよとスタッフが雑誌でバラしていた記憶がヒットしたので、そういう早バレは当時の葦プロ的には問題なかったのかも知れませんけど根岸監督とP的にはどうだったのか。
・28話のプロットはこの後も二転三転した形跡があり、スタッフ間で揉めた可能性があるんですがこれはまた別の機会に。
・メモリーの描写は特に問題ないんですけどねえ。当時のメモリーがアニスをどう思っていたのかが分かるのはとてもいい。肝心のアニス(とリョウ)がダメダメなのがこのSSの致命的な欠陥。
・学園が要塞化できる基地だったことをアニスは知ってるような描写ですが、実際は23話まで知らなかった様子。
おれじゃない
あいかわがかってにやった
しらない
すんだこと
だったんですかね。(※23話の脚本は会川氏です)
ラストに関しては既に書いたので省略。いくらアニスは望んで妖魔との戦いに挑んだとはいえ、サイボーグ化の何がそんなにめでたいのか説明してもらいたい。
…ちょっと待って一周年はおかしいぞ! スペースブロックのアレは2年前なのに。スペースブロックではなく、その1年後に起こった「妖魔が起こしたとある事故」でサイボーグになった案だったのが本編で変更になったということ?
しかしこの小説の何が一番タチ悪いかって、「リョウとアニスはチャックから見てもお似合いに見えるけど2人にそんな気はない。アニスはリョウを少しは意識しているかも知れないがリョウにその気はない」と、一見りょあにに見せかけたりょあに否定な内容なことですよ。当時既に美姫が登場し、チャックとの恋愛関係の進行に伴いリョウとアニスの接近は検討されていただろうので、「え? ちゃんとリョウ×アニス匂わせてるでしょ?」というスタッフ対策の意味合いがあったのかも知れませんけど。
好意的に見れば、アニスにとってリョウとチャックは頼もしい仲間であり、ずっと一緒に歩いていきたい男性たちであることは伝わります。リョウとチャックにとっても、アニスが大事な女の子であるとしていることは分かります。下手に恋愛を持ち込むよりこの距離感を維持する方が、作品にとっても彼らにとってもベターであるという主張であったなら理解できます。ジリオンの3人組とはまた違う男2人女1人チームの在り方の提示という意味でも。
でも、彼らのこの距離感に対するこだわり以上にアニスに執着し、リョウとアニスの関係の進展を頑なに認めなかった。結局ラバレで渋々認めるという顛末は正直いただけませんでしたね。園田氏のアニス観とボーグマンチームの人間関係観が凝縮されており、園田氏だけはこれを通したという意味で、貴重な内容と云えなくもありません。本編とどれだけズレていたかがよく分かりますしね。
記憶している方もいらっしゃるかも知れませんけどこのSS、ボーグマン関連の商品で最高に産廃なカセットブックでボイスドラマ化されてます。よっぽど気に入ってたのかモチベが尽きて使い回したのかまでは知りませんけど。ナディアを通ったせいか、鷹森さんのヒス演技に拍車がかかったアニスしか印象に残っておらず聴き返す気にはなれません。そもそも再入手してないけど。リョウとチャックはまあ良かったような。
2019年05月28日
【付録】続・アニメディア1988年9月号【小説】
posted by はらよしかず at 17:10| ボーグマン