私事でバタバタしてて疲労困憊していたこともあり、遅れましたが4回目のリョウ誕となります今回、いろいろ仕入れてきた情報が蓄積されたこともありまして、いくつかのキーワードを立てて改めて響リョウという主人公を見直していこうと思います。
リョウはスタッフによって解釈が微妙に異なり、それが顕著となった「ラストバトル」「LOVERS RAIN」では別人と云っていいぐらいに立ち振舞いが違った訳ですが、それでいて破綻するでもなく、“響リョウ”という器に収まっている不思議な主人公だったりします。アニス人気の前に(園田氏や雑誌媒体等で)存在を軽んじられた面もあったものの、それでも嫌われるでもなく安定した支持を保ち続けられる理由は何処にあるのでしょうか。
【ワードその1】JJ
云わずと知れた「赤い光弾ジリオン」の主人公。明朗快活で単純で子供っぽくてスケベと、二枚目半主人公のあらゆる要素を秘めた彼は、物語が進むと同時に“ジリオン世界の中心”として輝きを増し、存在感を示していきます。そしてジリオンは終了し、その後継である「ボーグマン」の主人公は、ジリオンから継続したスタッフとファンから“JJの残照”を期待される運命にあったと思われます。
しかし、響リョウはJJのような常識に捕らわれない奔放さはなく、スタンダードな熱血漢としてキャラの肉付けが施されていきます。
1クール目の段階では、時折やんちゃな言動行動があったりするなど“JJの影”が感じられましたが、12話で生徒や仲間に対して配慮を見せる様子がしっかり描かれます。そして13話で自身の夢破れた過去と、「子供たちの未来を守るために戦う」スタンスが明確となり、過去の影を見せたことでJJよりも大人びたキャラクターになっていくのでした。
【ワードその2】夏目想太郎
響リョウというキャラクターの形成において、不協和音を生み出す存在となったのが、放映スタートギリギリまで残った幻の主人公「夏目想太郎」。シリーズ構成の園田氏が企画段階から推していたキャラクターで、その在り方は画像の通り。“夏目漱石の(自称)子孫”である彼が、サイソニック学園の見習い教師として「坊ちゃん」的な活躍をするという構想が園田氏の中にあったようで、アニメディアの付録冊子で公開された没設定のいくつかが想太郎絡みだったこと、フリッツ博士は初期では学園の陰険教師(赤シャツ的存在?)という設定だったことからも、園田氏は「夏目想太郎ありき」の世界観で構成していくつもりだったのでしょう。
夏目想太郎自体は早々になくなったものの、名前だけは残しておきたいという意図があったのか、松本氏がオーディションを受けた時まで夏目想太郎だったそうで、園田氏にとって夏目想太郎は簡単に譲れない“主人公像”だったことが窺えます。
園田氏は公式ではジリオンに関してコメントは残していませんが、夏目想太郎の設定を見る限りでは、園田氏はJJを意識し、「JJ路線でJJよりも魅力的な主人公」として夏目想太郎を考案していたのではないか、そして「響リョウ」となった後も、園田氏の中でリョウはずっと夏目想太郎だったのではないか。少なくとも、岸間脚本の12話、会川脚本の13話のようなリョウは園田氏の引き出しの中になく、7-8話のような、軽率な言動行動でメモリーに叱られる場面が目立つ「半人前の教師」だったことは確かでしょう。
園田氏のこだわりを余所に、13話が決定打となったのか、リョウは岸間&会川ベースで肉付けが進んでいきますが、園田脚本回だけは何処か軽く、子供っぽさが目につく振舞いをしがちでした。しかし、それはマイナス要素にはならず、むしろリョウというキャラの幅を広げることになったと思います。マイナスになったのは、園田氏は雑誌媒体で夏目想太郎の設定前提でリョウを語り続けたせいで、本編のリョウと齟齬が生まれた点でしょう。個人的には、ドラマCDのリョウはリョウではなく、夏目想太郎のリベンジだったのではないかと思ってます。
【ワードその3】アニス・ファーム
誤解を招くかも知れませんが、ヒロインのアニスがボーグマンの代名詞的な存在となり、リョウに彼女の想い人という設定が追加されたことで、彼(の在り方)は振り回されることになりました。ここでさんざん云ってきたことですが、園田氏はリョウとアニスの“接近”に難色を示し、雑誌媒体で2人の関係を否定し続けると同時に、リョウの魅力をあまり語らなくなった。それは依頼元のアニメ誌がアニスありきの特集記事を組み、作品も他のキャラクターも顧みなくなったこともありますが、他ならぬ園田氏自身がアニスに魅了され、アニス萌えの大きなお友達に迎合し、「夏目想太郎の成り損ない」響リョウに対する愛着が薄くなったことが原因に思えます。
その園田氏のアニスへの執着を断ち切るかのように、根岸監督は園田氏を遠ざけた本編の終盤とエピローグ映像のFOREVERでリョウとアニスのカップルを成立させ、後日談のラストバトルで同棲関係にしアニスの“未来”を確定。レイナ同様にアニスの「キャラクターコンテンツ化」を目論んでいたはずの園田氏からアニスを取り上げた格好になった訳です。まあ憶測ですが。
でもラストバトルはあんだけ設定が二転三転したのに、「リョウとアニスの同棲関係」だけは変えなかった(付かず離れずだった関係が、事件をきっかけに結ばれる展開もアリだったと思うんですが)のは、根岸監督の園田氏対策に思えるんですよねえ…。クロノスがOAVであんな方向に行ったことで「アニスのレイナ化」を防ぎたかったのかしらと。
根岸監督の強引な幕引きに疑問を覚えた演出の村山氏が、ボーグマン作りたくて仕方なかった菊池氏と組んで制作したのがラバレで、根岸監督が触れなかった「リョウとアニスの恋愛」に焦点を当てた。そこにスポットを当てたところまでは良かったんですが、FOREVERという完璧なエピローグを否定する内容となり、2人の掘り下げの描写もファンが納得する内容とはならなかった。それは「リョウとアニスの恋愛」ではなく「ヒーローとヒロインの恋愛」のテンプレに2人を当てはめただけの脚本に原因があるんじゃないでしょうか。リョウもアニスも、園田氏がずっと書き続けてきた2人とは程遠いキャラクターになっていて、村山氏の要望に沿って脚本を起こしただけの「魂を込めてない仏像」だったんじゃないかと。
個人的にラバレはラストバトルよりも好きですが、園田氏のそういった「やる気のなさ」が目に付く作品でもあったりします。
ラストバトルとラバレ、どちらも重視されたのは「アニスの恋心」であり、双方共に必要としたのは「アニスから愛され彼女を守るために存在するヒーロー」としてのリョウ。その結果、「リョウのアニスへの恋愛感情」はおざなりにされ、解釈の相違からリョウは別人のようにキャラクターが変わってしまった。ただ、不思議なのはどちらも「本編からの派生」として見たらアリで、破綻までしていないところなんですよね。ラバレ→FOREVER→ラストバトルの時系列で並べるとあり得ないぐらいキャラが変遷しますけど。大人の事情がなんとなく察せるアニメファンはともかく、本編のメイン視聴者だった小中学生が見たらどう思ったのかしらね。
【ワードその4】松本保典
響リョウというキャラが破綻を免れたのは、松本氏の声と演技の力だと思います。ブルーレイBOXのインタビューによると、松本氏はリョウを「人と触れ合うことが好き」な人間と解釈し役作りをしたそうで、誰とでも親しくなれる人懐っこさ、親しみやすさからリョウを表現した。松本氏本人も非常にコミュニケーション能力の高い方だったようなので、そういうリョウと重なった部分が、スタッフのリョウの解釈にも影響を与えたのではないでしょうか。
松本氏が既に持っていた包容力のある演技がリョウを教師たらしめ、“やんちゃ坊主”のJJとは一線を画す方向に導くことになったと思います。なんせヒーロー役で一時代を築き、今では国民的人気アニメのパパ役射止めすぎですからねえ…(ゴクリ)。
OAV2本も、リョウの描写に違和感があっても、どちらもリョウとして成立できたのは、松本氏の声が付いたらリョウになる、その声の説得力だと思います。本当にいい声優さんが付いたよね…。
【ワードその5】菊池通隆
菊池氏といえばアニスのビジュアルばかりが語られがちですが、リョウに関しても非常に思い入れを感じるビジュアルを残しており、特に本編で振るわなかったバルテクターをはじめとするメカ描写の物足りなさを、菊池ビジュアルで補完していたファンは多かったと思われます。
菊池氏は「ジリオンとの差別化」を意識してキャラデザインをされたそうで、リョウはカラーリングこそJJと同じ黒と赤がベースですが、右足のバイクの修理道具一式入りの小物入れ(と云うのか)、手首に巻けるサングラス等、服装に男の子のハートをくすぐるギミックを仕込んでおり、私服はシンプルだったJJとは対照的になってます。
菊池氏は初期からリョウの「ヒーロー性」に焦点を当てたイラストを多く発表し、変身ヒーローに対するこだわりをリョウに託していた節があります。
思い過ごしかも知れませんが、菊池氏以前の「時代の寵児」だった美樹本晴彦氏は女性キャラほどに男性キャラを魅力的に描かない(モチベが低い)印象が強く、なもんで菊池氏の男性キャラもガチで取り組む姿勢は、私的には新鮮でした。ジリオンへの対抗心も根底にあったのかも知れませんけど。
菊池氏は今でも遺恨なようですが、本編に関わらずにイメージビジュアル専業になったことは、菊池氏にとっても作品にとってもプラスだったと思うんですよ結果論ですけど。もし途中で本編に関わっていたら、そこで気が済んでボーグマンを卒業してゼオライマーに専念していた可能性がありますし。
男性キャラを楽しんで描けるようになったのはシュラトから、とよく申されてましたが、ぬーたいぷのダストジードのべちにぱんつの時点で、もう充分楽しんで雄っぱいを描いていましたよね(根拠のない断言)。
話は逸れましたが、菊池氏はアニスに偏らず、リョウにも真摯に向き合い続けた。本編で絵的に物足りない部分をイラストで補い続けたことでリョウのキャラクターの幅が広がり、その魅力を増していけたと思います。
上気で挙げた要素、根岸監督がこだわった「メモリーの視点」によるマイルドな世界観によって、リョウはアクのない、“嫌われにくい”要素で構成された主人公になったのではないかという総括。彼が嫌われる理由があるとするなら「アニスの恋の相手になった」ことぐらいじゃないでしょうか。フックがないので印象に残りにくいという弱点はあるものの、バルテクターを通じてのビジュアルと松本ボイスで、今でも「マイヒーロー」として大事に思っているファンは多いと、わたしはそう信じてます。
まだ書き足りてない要素もありますが(これでも)、もうド長文なのでここいらで止めます。なんかまた園田氏ディスったよねよしかずさん。でも他に書きようもないし…。
例のSSとの関連はないネタ。この後2Pぐらい不毛なやりとりが展開される予定でした。
2019年09月24日
【リョウ誕】響リョウ考察2019。
posted by はらよしかず at 17:20| ボーグマン