2020年09月01日

【お察しの】クロ逆トークショーアーカイブ視聴【範囲】

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16話感想をやる気でいたんですが、先日あのシネマノヴェチェントで開催されたクロノスの大逆襲上映会&トークショーの、トーク部分のみの動画が有料配信されたことを知り、迷った挙句に視聴期限ギリギリで手数料込み2830円払って視聴しました。結論から云いますと2830円分の価値はありました。良くも悪くも。この出費のお陰でやっと買えたスイッチライトのソフトの購入選択肢が更に狭まる羽目になりましたけど後悔はない。
また画像ナシネタなので、だいぶ前にスキャンしてPCに取り込んだままにしていたぬーたいぷの記事から。年寄りだけが使い道を知っている綴じ込み付録。何月号のだったっけ…(駄目すぎる)。

以下はトークショーで語られた内容を下にした、剣狼を含めた考察との答え合わせとなりますが「有料」配信の意味を踏まえ、トークの詳細を記すことは控えます。2830円だし。ただボーグマンの時と異なり、ツイッターでイベントの感想を呟くのは(程度はあると思うのですが)OKと動画の最後で明言されていたので、検索して出てきた感想TLを物差しに書いていきます。万が一差し障りがあるようなら記事は削除します。

ゲストはトーク第一部が羽原信義・大張正己・園田英樹氏の3名で作画の話題がメイン、第二部が園田英樹&室賀厚氏の二名で文芸方面の話題が中心。羽原&大張氏のトーク内容に関しては、以前紹介したこの本とかなり被っているので、動画を見逃した方にこちらをおススメします。既にこれを読んでいたお陰で、話の飲み込みがスムーズに行きました。(画像クリックでアマゾンのページに飛びます)



お二人はトークお上手で驚いた次第。特に大張氏はなかなかのイケボそして発音も明瞭と、インタビューの文字起こしが楽そうだと思いました(元ライター目線)。
とにかくも、当時の葦プロが大味かつ上層部が外道だったのは嫌というほど察しました。まあAICも平野監督を過労死させる気だったのかという位こき使ってましたし、だいたい当時のアニメ会社なんてそんなモンだったようで。しかしタツノコのウラシマン班は優遇されていたと、前述の書籍で平野監督が語っておられましたね。その監督は畑に建てられたプレハブ小屋で寝ておられたそうですが。
話がそれましたが、第二部参加の室賀氏も話術が達者で面白かったです。ディオンドラが唐突にツンデレた回の方か…。

話を窺った限りでは、葦プロはアニメーターが死んでも納品が間に合えばすべて良し! と思っていたんだろうかと疑うような無茶振りをしながらも、仕事そのものは現場にぶん投げ…もとい自主性に任せ、あまり口出しをしなかった。クロノスは「いいんじゃない面白ければ」「時間ないしもうそれでレッツラゴー!」といったライブ感で成り立っていった作品であると知りました。2年で劇的に変わる訳ないし、たぶんボーグマンでもそのまんまだったんだろうなと。
なんとなくですが、葦プロと園田氏がその場の勢い任せでエンジョーイアンドエキサイティング! だったのに対して、根岸監督は真面目すぎたのかなあと思いました。だからこそ「メモリー・ジーンという母性に抱かれた都市の物語」が貫かれ、かろうじて地に足の着いた作品になったんでしょうけど。園田氏主導だったら、途中からメモリーが空気になってエスパーサイボーグになったボーグマンたちと妖魔がすっごい戦争はじめたけど風呂敷が畳み切れなくなったよメンゴメンゴ! 続きはアニス主役のOAVで! な素っ頓狂な作品になりかねなかったんじゃないでしょうか。
羽原氏のトークで吉田監督のスタンスが判明したお陰で、ちょっとだけすっきりしました。クロノスの制作に関しては、若手スタッフの育成が念頭にあったのかな。

で、参加者の質問のお陰で、剣狼伝説3でのロム兄さんの「あの」扱いが話題に上がったのですが、ああいうイベントに参加するようなコアなファンの間でもずっと謎だったのかと驚きました。円盤BOX関係のライナーノーツでちょろっとでも吐露してたんじゃないかと思ってたんですが、ずーっと沈黙してて現在に至ってたのか。

【剣狼伝説3】OSTライナーノーツ【寄稿文】

以前アップした剣狼考察ですが、結論から云いますとだいたい合ってました。書きながら的外れであって欲しいと思ってたんですけどね…。いっこ訂正するなら、最後のロム&ガルディとレイナの会話は羽原氏が追加したそうです。園田氏はああいう救済措置(?)は考えてなかった模様。
質問に対する園田氏のリアクション及び返答は、あのトークショーの肝のひとつなのでお察し下さいレベルのことしか書けませんが、憤り以上に、「作り手」と「受け手」の温度差を痛感しました。キャラに対する考え方が根本から違うので、ファンがどれだけ「ロムの死」を嘆いても園田氏にはそれが理解できず、隔靴掻痒にしかならなかったんでしょう。それぐらい斜め真っ逆さまな反応をされたということで。あの場にいた方々一瞬「えっ?」となってましたよねアレ。

割と腑に落ちてしまった理由に、園田氏はヤマト及びガンダムをはじめとする富野作品の洗礼をバッチリ受けた世代で、スタッフが作品の成立のために、登場人物の生殺与奪の権利をばしばし行使していた「当時のアニメ作品事情」があります。富野アニメは云うまでもないし、ヤマトなんて完結編で話題作りのためだけに沖田艦長が復活し、島大介は西崎Pに殺されたことを考えると(どう考えてもストーリー上で島が死ぬ理由はまったくないんですよね)、少なくとも80年代まではまだ「非実在キャラクターの人生」が軽かった時代でしょう。90年代アニメのナディアのフェイトさんのエピソードは、そういった「80年代の空気」を逆手に取った演出だったのかと今思いました。

園田氏にとってロムの死は、「妹であり愛する女性でもあるレイナを守り抜き、すべてを彼女に託してこの世を去っていく」というヒーローの“熱く尊い終焉”であり、それ以外に「剣狼伝説」の幕を引く術はなかった。それ以上でもそれ以下でもない行いであり、なぜファンが自分が決めた“たかが”アニメのキャラの死をそんなに怒り嘆くのかと困惑し、羽原氏にフォローを任せて沈黙したんじゃないでしょうか。

ボーグマンも「メモリーの死」は確かに物議を醸しました。メモリー考察でも書きましたが、メモリーの場合は根岸監督が「それを以て終わらせる」つもりで終盤の物語を構築し直し、彼女自身もレミニスの下に行くことで背負った業から解放されたという描き方をしていた訳で、根岸監督の「覚悟」は伝わるものだったと思います。ある程度の非難は想定済みだったんじゃないかと。
どう見てもレイナたんペロペロしたいお! だけの行き当たりばったりをやった挙句、唐突にレイナを宇宙最強のソルジャーヒロインとして君臨させるために、すべてを「…げる」した剣狼にそういった「覚悟」は果たしてあったんでしょうか。
個人の体感ですけど、無印セーラームーンのクライマックスのセーラー戦士の退場劇辺りから、業界がキャラの生死に関して慎重になっていった気がします。

しかし園田氏が後年「ロムの死」を反省しなかったのかと云えばそうでもなかったようで、ライジンオー“以前”の仕事は「若気の至り」だった旨を述べておられたし(拗らせたファンからエライ目にも遭ったとか)、謝罪らしき言葉もあったので、もう初老のおじちゃん突いても仕方ないんじゃないかな…。というか、クロノスの時はまだ二十代半ばだったそうで(30手前と勘違いしてました)、そんなに若かったのならボーグマンでも夏目想太郎や後半でのアニスへの執心等も、若気の至りで納得できる…かな…(ちょっと無理かも)。
あと、意外なことに(これは書いちゃっても大丈夫だと思うんですが)園田氏はライジンオーまで、子供を意識した作品作りをしてなかったそうです。妖魔の設定などのザルな部分は、「子供には難しいからやらない」ではなく、「主人公が夏目想太郎ではなくなったのでやれない(やりたくない)」だったのかしらね。演出陣に対するわだかまり等、たぶんボーグマンでもそうだったんだろうなと思われる内部事情語りも少しだけありました。やっぱり根岸監督への不満は相当あったんじゃないでしょうかね。

もう何べんも書いてきたことですが、改めて本編の途中で、園田氏からボーグマンを取り上げた根岸監督の判断は正しかったと確信しました。前述の通りキャラの扱いが軽かった上に、あの頃の自分はどうかしてました(意訳)な反省の弁まで飛び出すぐらいにジャイアンメンタルだったのなら、もし根岸監督がアニスを園田氏に譲渡していたらリョウは間違いなく酷い目に遭っていたでしょう。アニスがぼっくんの分身の篠田君(仮名)と素敵な恋をするために死んでくれ、と悪い意味で第二のロム化していたか、そこまででなくとも「園田ヒロイン」としてのアニスを輝かせるための道化にされてたか。とにかくリョウの冷遇は待ったなしだったと断言できます。
トークで垣間見えた当時のレイナへの思い入れから、各雑誌のアニス特集でのアニス語りは、各誌の編集部補正なしのガチだったんだろうなと。アニスはレイナに続くレイナ以上の「セカンド園田ヒロイン」だったはずだし。同時にリョウに対するコメントがぞんざいになっていったのがいただけないんですよ。あれもガチだったと思うとゾっとします。

まあ、園田氏の年齢相応の語りからして、もう自分からレイナやアニスに関わったりしないんじゃないかと思いました。レイナはもう“思い出”なんだなあ…という印象だったし、最近の園田氏の舞台の仕事の傾向からしても、わざわざ二次元のヒロインを掘り起こす理由が見当たらない。ねぎし氏のラムネ再起動ぐらいの愛着とエネルギーと業界での地位がないと無理でしょう。葦プロがサンライズ並にやる気を出してお膳立てを整えれば話は別でしょうけど、絶対ないね!(涙)

長文となりましたが、喉に刺さってなかなか取れなかった魚の小骨が取れた気分にはなりました。ありがとう2830円(←
次回こそ普通にボーグマンネタで更新したいです。
posted by はらよしかず at 18:00| その他アニメ