2020年12月22日

【今年で】LOVERS RAIN考察2020【30周年】

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予告通りラバレ30周年記念再考察です。と云いながら実は1年前に手を付けて放置していたテキストの続きの作業でした(白目)。本当は去年のイベントに便乗して発表したかった。
ブログはじめた当初にド長文の考察やりましたが、いろいろ再検証進めたことで認識が諸処変わりました。ぶっちゃけ、好意的に見過ぎていたかなーと思う要素が少なくありませんが、撤回するほどでもないというか(どないや)。
今回は2〜3回ぐらいに分けて、間を置かずに更新できたらなーと思ってますが思ってるだけです。

ラストバトルを見返す度に痛感させられたのは、ラバレが如何にラストバトルで根岸監督に「篩にかけられて落とされた」ファンの受け皿として機能していたか、菊池氏をはじめとする一部スタッフがラストバトルに不満を抱いたか、という点です。
ラストバトルから間を置かないタイミングでドラマCDが出たので、そっちを受け皿にしたファンも多いかと思いますが、わたしは(TVシリーズ終盤以降メインから外れたことで)一旦大人しくなった園田氏を調子づかせたギルティアイテムとして認識しております。菊池氏のカット目当てで再入手してますが、いまだに聴く気が起きないのもそのせいです。

下衆な見方をすると、ラバレのメインテーマである「リョウとアニスの恋愛関係の補完」は方便で、根岸監督に目にもの見せてやりたい、という「反根岸派」によるリベンジの産物がラバレで、その「逆襲」は間違いなく成功したと思います。おそらくその時には根岸監督の中でボーグマンは過去の経歴化していて、ラバレに関心はなかったと思いますが。もしかしたら、LD-BOXのライナーノーツにピックアップされなかったのは、根岸監督に当時を振り返る余裕がなく取材を断った可能性もあったりしたのかしらと。

で、本題ですが、ラバレの価値は内容を含め、アニメVと連動した「菊池通隆作監のボーグマン」のプロモーションで盛り上がったファンが、アニメVを通して発売に至るまで、スタッフと共にボーグマンを共有できた「お祭り」期間にあったんじゃないでしょうか。あの頃のアニメVは楽しかったよね…あ、余計なことは思い出さなくていいですよさないか押入れからアニメVを取り出そうとするのは!(荒ぶる語気)

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アニメV1990年9月号より。ここからリリースまで連載記事が組まれます。菊池氏とは専門学校時代からのお付き合いだったという村山監督との親密度の高さが窺えますが、これぐらい信頼関係を築けるスタッフで固めないと作品作れなかったんだろうなあと。菊池氏ががっつり作監やったOAVって結局ラバレとゼオライマーだけですよね。

何度か書いてることですが、ラバレ発売までの菊池氏の仕事量が本当に半端なく、ボーグマンを手掛けたい、ファンが求めるものを提供したい、という情熱には今でも心打たれるものを感じております。続編への抵抗感を抱えたままラストバトルを発表した根岸監督と対照的だったと云わざるを得ない。

なんせ、

・作画監督&Bパート絵コンテ
・セール版ビデオ&LDジャケット(+特典ポスター)描き下ろし
・レンタル版ジャケット描き下ろし
・サントラジャケット描き下ろし&楽曲解説文寄稿
・アニメV連載記事参加&表紙イラスト2回
・劇場版パンフレットコメント寄稿
・上映イベント登壇
・FC会報インタビュー


これらの仕事のほとんどをやり遂げられてるんですよ(さすがに本編の作監はお手伝いが入ったそうですが)。麻宮名義の仕事も抱えていたことを思うと、よく過労で再入院されなかったなあと驚嘆します。作監の現場もPとの攻防があった等ギリギリの状況だったそうですし、本当に執念の制作だったんだなと。
ラバレが当時のOAVでも稀有と云ってもいい点は、「菊池通隆作監のボーグマン」の一点突破で、ラストバトル超えどころか90年の東宝アニメビデオで売り上げ1位という結果を残したことじゃないでしょうか。おそらく菊池氏は「ボーグマンはオレが参加しなきゃファンは喜ばないだろ!」と素で思ってたと思いますし、自分を外して一方的に完結したラストバトルに憤り、ラバレという「反論」を(リリース的に)成功に導いた。そのプライドと当時の人気、実力が「本物」であることを自ら証明した訳で、そこは再評価されていいと思います。こんなナチュラルボーン俺様企画でヒットさせるなんて、今でもなかなかできることじゃないと思うんですよ。

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サウンドトラックのライナーノーツ。別のページで各曲ごとにコメントを付けていられます。それもサントラの付加価値になってるのが凄いところ。そして行間から垣間見える根岸体制への不満。TVシリーズもラストバトルも菊池氏的には相当に歯がゆい内容だったんでしょうね。

「超音戦士」の在り方をスルーして終わらせたラストバトルは菊池氏にとって納得のいく作品であるはずがなく、それはラストバトルで演出を担当した村山氏も同じ思いだった。ラストバトルの考察で飽きる程触れましたが、リョウとアニスが同棲に至るまでの「空白の期間」など三年後の登場人物たちを描く上で必要だったはずの設定を、根岸監督も岸間氏も他スタッフにきちんと説明してなかった(考えてなかった?)と思われます。アフリカ設定前提の岸間氏のSSでは、ラストバトルにはつながらないですしねえ。
アニメVの連載記事で、村山氏はラストバトル批判と取れるコメントを残しているので、スタッフ間でもわだかまりの残る現場だったのかも知れません。

内容は決して褒められたものではなかったものの(こら)、ラバレはスタッフとファンが一緒に打ち上げた最後の花火だと思えば、終始ファンに向き合うことなく幕を引いたラストバトルより、良心的な作品だったと思います。

ここまで褒めてますが、ラバレにも致命的な欠点が存在してます。はっきり云いますが「脚本」です。最初の考察で褒めちぎっていたわたしに云いたい。「もうちょっと冷静になって見たら園田氏はやっぱり園田氏だぞ」。(次回に続く)
posted by はらよしかず at 17:54| ボーグマン