年寄りなのでイマドキのラノベやラブコメのタイトルの長さにいまだに馴染めません。
そんな訳でチャック×アニスだった前回から本題の
チャック×美姫を語ってみようですが、以前ファントムスワット考察で語ったように、美姫は
園田氏が想定してなかったヒロインであったことがアニメ誌等から窺えます。3話のフリッツ博士とアニスの会話から、
ボーグマンチームのライバルチーム登場までは構想内にあったと思われますが、
そのリーダーとチャックの恋愛関係までは考えてなかったのではないか。
根岸監督も園田氏もやる気のなかった恋愛要素がひょっこり出てきた
経緯は不明ですが、魔女っ娘シリーズやオレンジロードを手掛けた
堀越Pの要望と推察しております。
この路線は
岸間氏に合っていたのか、積極的にチャック×美姫(&リョウ×アニス)を描いたのに対して、園田氏は
微妙な対応を見せておりました。園田氏がこだわったのはボーグマン3人による
バランスの取れた「男2人女1人」のチームで、美姫は
彼らの関係を壊す存在として構えていた節があります。
再掲ですが、これらをアップした方が手っ取り早いので。
ホビージャパンの美姫フィギュア記事のコラム。美姫は
「ミステリー」だったと強調していることから、最後まで
彼女のキャラを掴めないままだったことが窺えます。美姫の基本設定を作ったのは他のスタッフで、
「桂財閥のお嬢様」がファントムスワットのリーダーとなり、妖魔に立ち向かう理由等、
細かい掘り下げまで誰も手が回らなかったんじゃないかと。コラム内でも
「うまく使い切れなかった」と認めていらっしゃいますが、
「自分の構想の外から入ってきた」ヒロインに対する当惑があったと読み取れます。いいキャラなのは認めていても、響リョウと同様、
他のスタッフから押し付けられた「余所の子」という抵抗感を拭えなかったんじゃないかと。チャックとの恋に関する記述
「ほのかな友情」に注目。
何度もアップしている
アニメージュ10月号の園田氏コメント。既に美姫がチャックと接近しているのに、「アニスのリョウへの思慕に触れるとドロドロした三角関係になりかねない」と
ちぐはぐなことを主張しているのがずっと疑問だったんですが、もしかしたらこの記事の取材を受けた時点では、園田氏は
チャックと美姫をくっつける気はなく、前述の「ほのかな友情」で留めるつもりでいたんじゃないかと気付きました。
園田氏が
アニスに入れ込み始めた時期なので、チャックにとって
いちばん大切な女の子は美姫ではなくアニスであり、それはリョウも然り。互いに手を出せないように牽制し合いつつ、アニスを大事にしていく
(恋愛になりそうでならない)「正三角形」を通したかったんじゃないでしょうか。
「クロノスの大逆襲」はいいサンプルで、ロム兄さんに熱烈アプローチしレイナと張り合ったりしたものの、最後はレイナと共に旅立つロムを見送った
ミンぐらいのポジションで、園田氏は美姫を考えていたんじゃないですかねえ。
以降も園田氏は
この設定を前提に3人の関係を語っておられましたが、
実際の本編にはほとんど反映されておりません。園田氏の中では公式でも、
他スタッフが認知してない設定が多いのがボーグマンの困った点。しかし根岸監督も
絶対に本編になかったセリフや設定をインタビューで語っていた罠。
そういうとこだったんやぞ。17話でお互い呼び捨てだったのに
18話では「チャックさん」「美姫さん」と妙にかしこまってるのに違和感。
園田氏が
チャック×美姫に消極的だったとすると、18話で(17話できっちり描かれていたにも関わらず)
美姫とボーグマンチームの距離を改めて強調した理由がしっくりいきます。美姫はチャックに魅かれていても、
これ以上彼女がボーグマンチームに歩み寄ることはない、と2人の間に線を引く意図があったんでしょう。18話を採り上げる時にまた触れますが、後のライジンオーの長官、超者ライディーンのクロウに見られる
「反主人公思想」の源流に美姫がいたとしたら、
Aパートできっぱり否定したボーグマンチームを、Bパートで
あっさりスペースブロック内部に入れたのは不自然なんですよ。長官やクロウの
柔軟性皆無な頑なさを見ると分かるんですが、
園田氏流の手癖と云うかお約束なら、状況的に頼るべき援軍だったとしてもボーグマンチームを
美姫は信念ゆえに拒絶して、結局
ボーグマンチームが強引にスペースブロックに突入する流れになったはずなんですよ。
なもんで、Bパートは
絵コンテで根岸監督がかなり手を加えたと思ってます。根岸監督は
「メモリーの(母性ある)視点」を重視しておられたので、ボーグマンではあんまり
ギスギスした人間関係をやりたくなかったんじゃないかしら。
5話で
マリモ先生→チャックを入れちゃったことも、園田氏的に
枷になったのかも知れないですね。本編にマリモ先生と美姫の恋のさやあてまで入れる余裕はなかったでしょうし。いま考えると、一度は放置されたマリモ先生を
コメディリリーフとして拾い上げて、バーガー署長とのロマンスに持って行ったのはミラクルだったんじゃないでしょうか。
しかし、園田氏は24話で
チャック×美姫がほぼ成立する場面を入れてます。ただ、ここでもBパートは
園田氏というより岸間氏の作風に近いので、本当に園田氏による恋愛描写だったのか疑問。やっぱり
絵コンテで変えられた可能性を捨てきれない。穿った見方をするなら、24話でも
美姫がチャックに本気になっただけで、チャックは美姫を振って
アニスを選ぶ可能性を残していた。チャックとリョウを
レイナにおけるロム&ガルディと同様、
「アニスの幸せの為に無償で尽くす」存在として据えようとしていたんじゃないか、という
疑念がちょーっとだけあったりします。クロ逆の最終回では大いなる使命を果たす為に
想い人のルリィと別れたはずなのに、剣狼3で
レイナ「姫」の為の存在になったブルージェットを見ると、流石にそんなことまでしなかったとは云い切れないンですよ。
これも再掲のアニまかインタビュー。これに
園田氏の美姫に対する本音が全部出ていると云っても過言ではない。自分の考えていた三角関係が
美姫の登場で台無しになった、ということですよねコレ。いうてジリオンの三角関係も匂わせただけで恋の花が咲くまでに至っておらず、
いいお手本になったはずなのにやっぱりジリオンを見てなかったんですかねえ。
結局
「アニス姫を守る2人の(おバカな)騎士」が園田氏なりの落としどころで、
チャック×美姫も肯定しきれなかったのはドラマCDから窺えます。あれとカセットブックのチャックと美姫はカップルというより、
ドスケベ男とヒス女がてんやわんやしてるだけで微笑ましさも何もあったもんじゃない。ラストバトルのような
ストレートにラブラブな2人は書けなかったでしょう。ラバレは尺の都合であれが限界だったと思いますけど。後年のライジンオーでは小さな恋のメロディがちまちま描かれていたのに対して、
年頃の男女の恋愛描写は極力避ける傾向にありましたよね。
美姫の出番が比較的多かった
岸間&会川脚本だと、終盤からしっかりとフラグを立てられておりました。岸間氏は
ファントムスワット初登場の15話から美姫を書くことが多く、チャックと美姫は岸間氏が育てたカップルと云っても差し支えないんじゃないでしょうか。
会川氏は
23話&27話でチャック×美姫を書かれましたが、23話の美姫はクールに振る舞いながらも、ピンチをチャックに救われた時に見せた
安堵の表情が可愛かったし、デートに誘えと
チャックの背中を押すリョウが微笑ましかったりと、会川氏にも
チャックと美姫のラブコメちっくなエピをやって欲しかったですねえ。会川氏はチャックへの思慕という分かりやすい要素があった分、
美姫の方がアニスより動かしやすかったんじゃないかと思えます。個人的にも、ボーグマンと慣れ合う気はない、だけど頑固に拒絶もしないという、会川氏が据えた
美姫のスタンスがいい塩梅な気がします。
27話で
美姫を助けたいチャックを支えるアニス、しかしピンチに陥った2人を救う
「ヒーロー」がリョウという構図がボーグマン3人と美姫の関係のピークで、
これ以上は要らないぐらい完璧でこの流れを保持できていたら、チャックと美姫は
もっと色気のあるオトナの関係になったかも知れないし、リョウとアニスの関係も踏み込んだものになったんじゃないですかねえ。
28話でリセットされたのは本当に勿体ない。
結局
園田氏の批判になるので、我ながら
いい加減書き飽きててうんざりしてるんですいや本当に。でも
「登場人物も世界もすべては愛するレイナの為に」を完璧にやり切った
剣狼3も悪いんですよ。あんな内容でなければ
ここまで疑うこともありませんでしたと断言。
しかしながら美姫は
「チャックとの恋」をとっかかりにキャラメイクが成されていったヒロインなので、園田氏は恋愛要素に頼らず、
「フリッツ博士の信念を継ぐ者」という角度から美姫を見ていたなら(コラムの「人間として妖魔と戦っている」を信じれば)、
また違う魅力を見せた可能性はあるっちゃあるんですよね。しかし隊員たちは、
一応いがみ合っている関係のボーグマンと隊長が親密な関係なのを容認してたんだろうか。必要なのは組織の力! と
ムキになってるのは美姫だけで、他の隊員は
別に共闘してもいいんじゃないですかあの優男と一緒にいれますよ隊長?(ニチャァ)だったんだろうか。そういえば27話でファントムスワットを退場させて
美姫だけを残したのは、根岸監督にとってもファントムスワットは
扱いに困る設定だったんでしょうかね。玩具関係なかったし。
もっと
本編の情報だけを拾い上げて、チャック×美姫の萌え語りをしようと思ってたんですが、
実際やってみると難しくてこういうまとめ方になりました。考察のために
情報を整理していくと、
園田氏の主張の強さもさることながら、基盤たる
ファントムスワットの内部事情がほとんど描かれてない。その
組織の中心である桂美姫の人物像がイマイチ見えないまま
恋愛関係が進んでしまった。そのせいで
何かが足りない、何かが惜しいカップルになってしまった面はあると思います。せめて17話みたいな
2人がプライベートで逢うエピがもういっこぐらいあれば…そういえばリョウとアニス&メモリーは休日に何をしてるとか、そういうエピがほとんどなかったんですよね。
カップル事情と云えば、ジリオンでは
ぬーたいぷで独自のカップル論(JJ&チャンプ以外×アップル、JJ×アディ等)を熱弁していた渡辺麻実氏も、アニメディア付録のSSで
アップルを既婚者にしたりとスタンドプレーに走ってましたが、結局
公式化までは至っておらず、渡辺氏もそこは弁えていたと思われます。園田氏は
「原作者」を自負していただけに、逆に
根岸監督に譲歩を迫る立場だったんでしょう。
果たして
足並みをそろえるべきはどちらだったのか。ボーグマンを語っていると
そこでモヤついて溜息が出てきちゃうんですよね。何度も云ってますが
、園田氏がいたからこその魅力も間違いなくあるので。
年内は来年の抱負など、
雑談でもう1回更新予定。予定です(強調)。